阪神大震災と貯水タンク

阪神大震災から16年

今日であの大震災から16年が経過します。

私達きんぱね株式会社も多くの事を阪神大震災から経験し学びました。

時間が経つにつれ人々の記憶から消えていくのが現実です。
その記憶を風化させない事、阪神大震災から学んだ教訓を仕事を通じて伝えて行く事が大切です。

行政に出来る事は限界があるのが実情です。
大震災が発生した直後に頼りになるのは自分自身です。
自分の身は自分で護る 次に家族を護る そして近隣を護る
その意識を持ち続けることが大事だと思います。

阪神大震災では、まず2次災害での初期消火に水がなくて被害が拡がりました。
次に怪我人の治療にも水がなく困りました。
さらに避難所でも水洗トイレが使えず思いがけないことが起こりました。
多くの人は救援物資が届いたにも関わらずトイレが使えないので水を飲まないように我慢したのです。
それが要因で冬季でありながら脱水症状を招き、地震によるストレスとともに心筋梗塞や脳卒中等の突発的な病気で亡くなられた方がたくさん居られました。
生活用水の確保こそが生死を分けたとは決して過言ではないと思います。

万一に備えて貯水タンクを護る

それこそが当社に与えられた社会からの使命だと改めて認識しておりますヽ(・o・)丿

阪神大震災の教訓

過去FRP製の貯水タンクはその耐久性が半永久的とされていましたが、実際には水が上下する時の負荷や太陽光線中の紫外線、また熱、風雨等様々な要因によって確実に劣化して行きます。
当社で設置後15年が経過したFRPパネルタンクのFRP板の強度を計測しました。その結果製造時の強度に比べて、曲げ強度で約60%以下、引っ張り強度で約70%以下になっていました。

阪神大震災ではこういったタンク強度の低下から、多くのタンクが破裂して緊急時の水が確保できなかった訳です。

阪神大震災では、まず二次災害での初期消火に水が無く、被害が広がりました。多くの火災は、地震直後からのものもありますが、倒壊・半壊した家から漏電などによって数時間後に火災が発生しました。この初期消火にあたる水が無くいたるところで火災が続いたわけです。

また怪我人の治療にも水が足りませんでした。
あまり知られていませんが、水が足らなくて特に被災者が困ったのはトイレです。
水が足りなかったので水洗トイレが使えないようになった訳です。すると人々はトイレを我慢するので救援物資として届いた飲料水を飲まなかったのです。
その結果、冬季であるにもかかわらず脱水症状を招き、さらに地震によるストレス重なり、心筋梗塞や脳溢血等の循環器系の突発的な病気で倒れたり、亡くなった方が多くおられました。

各地域のよって災害対策用貯水槽整備基本要綱と言うものがあって、これは災害時の飲料水を確保し、併せて初期消火に必要な消防用水を確保する為の基本的な事項をまとめたものがあります。その内容に概ね500m圏内に1ヵ所40トン規模の貯水タンクを設置する事とあります。

政府の地震調査会によると首都直下地震の発生率は、すでに70%以上と言う時期に入っており、その被害は阪神大震災の2倍以上と考えられています。この様な状況下で500m圏内に1ヵ所40トン程度の貯水量では被害の拡大を防げるわけではなく、だからこそ自分達で命の水を確保する事が必要です。

例えば東京都内だけでも約23万基の貯水タンクがあります。そして台東区だけでも約2万基の貯水タンクがあり、この貯水タンクに10トンづつでも貯水できれば、万一災害で水の供給がストップしたとしても20万トンもの水が人々の命を守ります。

阪神大震災後1週間目の中高層住宅住民の困ったことについてのアンケート結果
①トイレの洗浄水   ⑥照明
②風呂         ⑦洗面
③炊事         ⑧冷蔵庫
④洗濯         ⑨エレベーター
⑤暖房         ⑩その他etc
なんとその他を除いた9項目中5項目までが水が無くて困ったと言う結果になりました。

災害緊急時の水の確保がいかに大切か、そして水の確保で貯水タンクがいかに重要な設備か私達は再認識しました。

現在都心部では新築ビル・マンションを中心に増圧直結給水方式に切り替えが進んでいます。しかしながら増圧直結給水方式はブースターポンプで水を直接給水する為に貯水タンクがありません。地震等の災害時に停電すればすぐに断水になってしまいます。しかも水を貯めていないのでとても危険な状況に追い込まれます。

建物にある貯水タンクを清掃時にしっかりと点検し、問題が起きる前に予防処置としてPTSリユース工法で補強を行い、常日頃から地震や風雨に絶えられる様にしておく必要があります。

施工前
施工後

PTSリユース工法を行なえばタンクを取り替える必要がなくなり、コストも取替えに比べ半分以下で済みます。さらには社会的に問題になっているFRP製品の産業廃棄物化の削減にもつながります。

適切な時期に適切な処理を早め早めに施してやれば、貯水タンクを建物がある間は永年的に使用出来、さらに命の水が確保できるのです。自分の命だけでなく地域の人々を守るためにも貯水タンクは必要不可欠な命の水ガメです。

PTSリユース工法について詳しくはきんぱね株式会社をご覧下さい。

阪神大震災での貯水タンクの被害

平成7年1月に発生した阪神大震災では、多くの建物と設備が被害を受けました。
当然ながら多くの貯水タンクも破壊されて機能が停止しました。

小型のFRP一体型タンクの受水槽の破壊された写真です。
上からなにかで押しつぶされた様な壊れ方です。

大型のFRP一体型受水槽の破壊された写真です。
これも小型のものと同様に天井部をなにかで押しつぶされた様に壊れています。

FRP球形タンクの高架水槽が破壊された写真です。
下から突き上げた様に潰れています。

これもFRP球形タンクの高架水槽です。
設置状況や高さが違っても同じように下から突き上げた様に潰れています。

FRPパネルタンクの受水槽の破壊された写真です。
FRPパネルタンクは多くが天井部を破壊され貯水が不能になりました。

こちらはFRP一体型の高架水槽の破壊された写真です。
タンクの形状は異なっても破壊のメカニズムは共通したものがあります。
それは阪神大震災が直下型の地震で非常に強い縦揺れであったという事です。

地震の強さは水平加速度をガルと言う単位で表し、震度7で400ガル以上とされています。
阪神大震災は神戸市の中心から西宮市にかけて、600ガルを超えており関東大震災の2倍程度の揺れだったとの見解もあります。
しかし関東大震災では地震計によるデータはまったくなく、当時の被害の状況から300~400ガル程度と推測されています。

阪神大震災は直下で活断層が動いたことから縦揺れがこの水平方向への揺れに加わり想像を絶する破壊力となって、建物の倒壊や設備の破壊につながりました。

タンクは中に水が入ってたので、縦横にシェイクされた状態でタンクの内圧が上がり、その内圧に天井が耐えられなくなって水柱が立つようにまず天井が抜けてしまったわけです。これをスロッシング現象と呼びます。
その次に天井が抜けてしまったために側面が水圧に耐えられなくなって、外に倒れて破壊したのです。
特に古いタンクほど、もともとの構造上、水圧で外に開こうとするタンクの応力を天井部自体で支えているものがほとんどです。さらに古いタンクは経年で劣化し、強度が低下しているので尚更です。